それなのに心臓は勝手に動いている

エッセイ、経験談、持論を綴るだけ。

死ねない病気

 

 

 

初めての発作は中学2年の給食の時間。

近くの人と机を合わせて

まさに「いただきます」をしようとした時だった。

もうそのあたりから意識がないのだけど、

私が椅子に座りながらもふらふらしているのに

気が付いたクラスメイトが私に声をかけようとした時

椅子から転げ落ちて額を床に打ち付けたらしい。

目が覚めた病院でそのことを聞いたのだが、

まさにその打ち付けた額がじんじんと痛むことから

その話が本当であるとわかった。

 

 

 

 

 

 

私の病気はてんかんだった。

100人に1人がてんかん患者らしい。

皆さまの身近にも

てんかん持ちの人がいるのではないだろうか。

決して珍しくない、身近で、

誰でもなる可能性のある病気だ。

冒頭のお話通り、私のてんかんは後天性だ。

 

脳に何らかの障害があったり、

生まれながらのものではなく、原因不明。

いつも通りの生活を送っていたら突然発症した。

 

 

 

 

 

てんかん発作の症状は様々だ。

意識がはっきりしている人もいれば

うつろな意識のままウロウロ動き回る人もいる。

 

私の場合は、強制シャットダウン状態。

突然意識がなくなる。

直立した状態で発作が起きれば、

手で受け身をとることもできずにそのまま床に倒れる。

 

もしも高いビルの屋上で発作が起きたなら、

私は文字通り手も足も出ずに

地面に真っ逆さまである。

 

あとは手足のけいれんや硬直。

意識はないのにガクガクと震え、

ぐっと歯を食いしばっていたり、

蟹のように口から泡を噴いて

倒れていたこともあったらしい。

 

そんな衝撃的なぶっ倒れ方なのだが、

この発作によって大事に至ることはほぼないという。

 

危険なのは二次被害だ。

ビルの屋上の例え話もそうだが、

一番よく聞くのは、車を運転しているときだ。

 

 

「アクセルを踏んだまま意識を失い、

人の列に突っ込んだ。

運転手はてんかん患者だった。」

 

 

こういう報道をみるたびに

自分も加害者になりうる身であることを痛感する。

自分1人がケガをするならまだしも、

人を殺してしまうかもしれない。

私も含め、てんかん患者は

もうほんとうに嫌というほど、

病院の先生や周りの人間にそう言われてきた。

 

 

そのため、てんかん患者が

免許の取得、免許の更新する際は

 

てんかん発作が二年以上なく、

運転をしても差し支えない」

 

という診断書を医者からもらい、

提出することが義務づけられている。

 

とはいえ車を運転する者がてんかん患者だと

やはり心証が悪いらしく、

警察署に診断書を提出に行ったとき、

受付の女の人の訝しげな顔に

『 本当に大丈夫なんですか? 』

と書いてあったのを覚えている。

 

 

 

てんかんに特効薬は令和3年現在はない。

だが、発作の度合いによって決められた

適切な量の「抗てんかん薬」を服用することにより

発作を抑えることができる。

私の場合は1日2錠。

 

てんかん薬は様々な副作用があり、

朝1錠、夜1錠を服用していた私は

特に眠気が酷かったため、先生と相談して

最近は夜2錠にしてもらっている。

 

(あとは夜更かしや生活習慣の乱れからも

てんかんの発作が引き起こされることがあるという。)

 

 

読者諸君には、どんな薬でも

用法・容量を守って使用して頂きたいのだが、

てんかん薬をうっかり10錠飲んでしまった時の記事はこちら↓

muroga.hatenablog.com

 

たった10錠飲んでしまっただけで

えらいことになるので、

薬に詳しくはないのだが、

素人目でも結構強めな薬なのかなと思う。

真似しないように。

 

 

 

(そういえば

副作用で個人的に面白かったことが一つあって、

私は朝の車での通勤の際に

毎回音楽をかけていたのだが、

たまに、半音?ワンオクターブ?低く感じる時があった。

当時はなんだろうなと思いながらも

特に気に留めていなかったのだが、

最近、それについて調べたところ、

どうやら抗てんかん薬を服用した時に起こる

原因不明の副作用らしい。)

 

 

 

 

 

毎日薬を飲むことを習慣にしていても

人間なのでどうしても忘れてしまうことがある。

私は学生の時期は特に忘れっぽく、

何度も飲み忘れてはぶっ倒れていた。

 

( 救急車のサイレンの音で目覚めては、

「救急車って車内めちゃくちゃうるせえ…」

の経験を5回以上した。 )

 

てんかん患者が自身で徹底するのは

もちろんのことだが、

周りの人が病気のことを理解し、

支えてあげる必要がある。

 

私の場合だと、例えば新規で会社に勤めてすぐに、

てんかんに関する資料を提出するようにしている。

仕事中に発作が起きてしまったときの対処法や

てんかんはこういう病気であるという説明をする。

 

あとは、私は忘れっぽいので

私が薬を飲んだか周りの人に逐一確認をしてもらう。

そうすることで飲み忘れを防止できる。

 

飲み忘れを防止できれば

倒れることはないのでね。

 

 

 

最後に、皆様の身の回りで、

(私のような完全気絶型の)てんかん患者が

発作を起こした時のための心得をお教えする。

 

 

 

 

 

・安全な場所へ移動させる。

 

てんかんは、突然やってきます。

車通りが激しい場所や、

入浴中の発作は放置すると危険なので

まずは安全の確保をしてください。

 

 

 

・まず落ち着いて観察する

 

発作が起こると驚くとは思いますが冷静に。

発作が始まった状況、時間、

どういった症状かをよく見てください。

けいれんがすぐに治まったら

とりあえず様子を見てください。

発作後は深く眠りにつくことがあります。

けいれんが5分以上続くようなら

救急車を呼びましょう。

 

 

 

・むやみに動かさない

 

発作はあなたが何かアクションをしたからといって

収まるものではなく自然に収まるものです。

大声をかけたり体をゆするのはやめましょう。

食事中の発作であれば、嘔吐をすることがあります。

その際は体を横にしてあげましょう。

窒息を防ぐことができます。

 

 

 

この3つさえ押さえれば大丈夫だと思う(多分)

私はてんかん患者の発作を見たことはないが、

私が倒れて、意識が戻るとだいたい周りで

誰かしら泣いていた記憶があるので、

結構ショッキングなことなのだと思う。

とにかく落ち着いて行動するのがいい。

発作で死に至ることはありませんから。

 

 

てんかん持ちの人間は多分、

この病気の発作によってもたらされる

迷惑を許されていない。

事故を起こすことも自分が死ぬことも

人を殺すのも、きっと許されていない。

 

薬飲め!

てんかんのひと、薬飲め!💊

 

 

 

私はもう数年発作が起きていないが、

それは薬をしっかり毎日飲んでいるからであって、

薬を飲み忘れれば必ず発作がくることを

これからもしっかり意識しながら生きていきたいと思います。